射手座の男/赤いマスタング

18禁のBL小説です。音大のバイオリン専攻大学院生×ピアノ科学生の恋愛と、ニューヨークに住む30代日本人男性二人の恋愛の2本を載せています。※移転しました。移転先はプロフィールの下に。

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赤いマスタング 3-6 【危険】

 寺本の家の前に緑のカムリが停まっている。 寺本がいる。寺本が帰って来ている。滝田の気持ちが高揚した。
 このまま、泊まっていってしまえばいいのだ。寺本に何を言われようと、家の中に入って、無理矢理抱いてしまえばいいのだ。
 滝田は白い小さなレンタカーを緑のカムリの後ろに停めた。これなら勝手に車を乗り出すことはできない。
 家の前に大きなバンが路上駐車してある。滝田は車を降りると、その黒いバンに近付き車中を覗き込んだ。工事車両のようだ。中にはコンクリートの破片やノミや金槌といった大工道具のような物が散乱していた。
 合鍵でドアを開けると中は真っ暗だった。寝ているのだろうか。リビングのテーブルにはビールの空き缶が何十本と置いてある。あの寺本が片付けないで寝たとは考えにくい。
 寝室から物音がする。近付くとドアの向こうから家具のきしむ音と男の唸り声が聞こえた。寺本の声ではない。
 そのまま逃げ出すこともできた。
 見なくとも、その先にあるものは解った。
 しかし万に一つの間違いを期待して、滝田は寝室のドアを静かに開けた。
 ドアを開けた途端、異様な熱気が滝田を襲った。寝室全体が湿気を帯びている。眼鏡を掛けている訳でもないのに、その湿気で一瞬目の前が曇ったような気さえした。
 大きな熊の後姿が見えた。壁に向ってベッドの上に立ち、べッドをぎしぎしと言わせている。熊の背中の左右に、ちらちらと鹿の姿が見え隠れした。
 大きな熊が、後ろから鹿に襲い掛かっているのだ。
 熊は立ったまま自分と壁の間に鹿を挟み、鹿はその足をベッドに固定させてさえいない。熊の激しい腰の動きとは反対に、鹿は既に息絶えているのかと思われるほど生気がなく、熊に腰をつかまれ、右に左に上に、なすがままに振り回されていた。
 熊の動きが止まった。肩で大きく息をしている。腰を放された鹿はベッドに倒れ込んだ。すると熊はベッドに膝を付き、うつ伏せの鹿の尻をパチンと力いっぱい叩いた。鹿が叫び声をあげる。再度叩いた。再度叫び声をあげた。何度も叫び声を上げながら、脚を引き摺り、瀕死の鹿がシーツの上を這っている。鹿のでん部が赤くなっているのが、ここからでも確認できる。熊はその細い二本の脚をつかみ、自分の方へ引き戻した。
 熊はゆっくりとした動きで鹿の上にのしかかった。そして鹿の腰を持ち上げた。
 激しい音と共に、熊は再び動き出した。機関銃のように腰が動く。張り手を食らわせたようなパンパンという音が響き渡る。僅かに息を吹き返した鹿が必死に声をあげている。機関銃はいつまでも炸裂音を立てていた。
 また動きが止まった。今度は熊の左右の中殿筋が交互にしわを寄せ始めた。熊は地の底から響くような声でずっと何かつぶやいている。
 そしてまた、今度は鹿のとどめを刺すかのように動き始めた。
 これは地震だ。ベッドの振動が床や壁にまで伝わっている。ホコリ臭い。ヘッドボードが壁に当たり、壁のペンキの粉が少しずつはがれているのだ。
「Oh...yah........fuck me...」
 暗闇に小さな声が響く。
 滝田の体が凍りつく。
 熊は大きな雄叫びをあげて上を向き、首を大きく左右に振った。熊が斜めに腰をひねると、また小さな声が聞こえた。
「Yeah..., right there...(そこだよ)」
 滝田がこれまで聞いたこともない甘い声だ。鹿は最後の時を迎えるために、自分の股間に右手を当て必死に動かしている。
「Cumming...........(いく)」
 すると熊の腰の動きがピタリと止まった。そして股間にあった鹿の右手をつかんで高く上げた。左手首もつかんで高く上げ、鹿の自由を完全に奪った。
「No, not yet(だめだ、まだだ)」
 熊の声は笑みを含んでいる。熊はピクリとも動かない。
 いきたいのにいけない鹿は、なす術もなくぐったりと頭を垂れた。まるで十字架に貼り付けにされた罪人だ。
 生殺しだ。
 滝田の体が奮える。動けない。
 張り詰めた空気。
「......Let me cum...........(いかせてよ)」
 息も絶え絶えに鹿が懇願する。
 耐え切れず、ついに鹿は自ら腰をパンパンと後ろの熊に打ち付け始めた。すると熊は鹿から体を離した。
「No」
 鹿の声が泣き声に変わった。
「..................Please...」
「Please what? Say it」
「...Please fuck my asshole...... and let me cum」
 窓から差し込む月の光が当たって、熊の右肩に『悟』の文字が見えた。
「OK, go ahead and cum...(よし、いけ)」
 鹿の両手を離し、再び熊が鹿の体内に侵入しようとした時、滝田の手の中にあった鍵が床に落ちた。
 闇の中で二頭の獣が同時に振り向いた。
 寺本の前髪は汗で額に貼り付き、体は月の光に照らされ光っている。胸や肩、腹や腰、すべてが汗で光っている。
 一、二歩後ずさりをした後、滝田は脱兎のごとく玄関まで走った。
 外に出ると、家全体が揺れるほど力いっぱいにドアを閉めた。
 小さな車の大きな急発進の音が、静かな住宅街に響き渡った。

「別れたんじゃなかったのか」
 困惑したヒールの問いに寺本は答えず、その太い首に両腕を回した。
「ねえ、続きをやろうよ」
 ヒールはその腕を振り払う。
「冗談じゃない」
「あと少しでいくんだよ」
 ヒールは大きな体を揺らしてベッドから下りた。
「おれは帰る」
「ねえ、いかせてよ、気持ち悪いよ」
 床に落ちている寺本のジーンズを拾い上げ、ベッドの上に投げた。
「早くはけ、上は裸でいい、とにかく早く追い掛けるんだ、急げ」
「呼び戻して、三人でするの?」
 寺本を無視して自分のジーンズを拾い上げようと腰を曲げたヒールの大きな背中に、寺本は後ろから飛び付いた。
「おんぶしちゃった」
「離せよ」
「嫌だよ」
 寺本は後ろからヒールの首にキスをした。
「ベッドに戻ってくれるまで離れないからね」
「急げよ。おれが無理矢理入り込んだってことにすればいい、恐くて逆らえなかったって、そう言え」
「帰らないでよ、お願いだから、ずっとここにいてよ」
「……サトル」
「僕を一人にしないでよ」
 ヒールは大きくため息を吐いて、寺本を背負ったままベッドに腰掛ける。
「…お前………いい加減にしろよ」
「何が?」
「お願いだから、いい加減にしてくれよ」
 ヒールは後ろを向いたまま両耳を手でふさいだ。寺本はその手をつかんで耳から離し、ヒールの顔を覗き込んだ。
「愛してるよ、ヒール」
 ヒールは横を向き、奥歯を噛み締めて力の限り寺本を睨む。そのきつく結ばれた唇に、寺本が小さくキスをした。
「懐かしいな、この髭の匂い」
 口の周りの長い髭をつまみながら何度もキスをした。
「僕がお風呂でよくトリミングしてあげたよね。憶えてる?」
「…ああ、憶えてるよ。お前、下手クソで、いつも左右の長さが違っちゃうんだ」
「で、結局君が自分で直すんだよね」
「ホント、お前には苦労したよ。朝起きると三つ編みされてたり、ここの先にマーカーで落書きされてたり」
「あれ、日本語で『へのへのもへじ』っていうんだよ」
「知るか、そんなの」
「楽しかったなぁ、あの頃」
 ヒールの顔がほころぶ。
「…ホントにそう思ってるのか?」
「あの頃に戻ろうよ。僕、やっぱり君じゃなきゃ駄目なんだよ」
 ヒールはそのままずっと、昼も夜も寺本の家にいた。
 そして毎晩、二人はベッドの上で母親の声を聞く。
「このヒステリックな女はいったい誰なんだ」
「付き合ってた女の子だよ」
「嘘吐け」
「今度さ、電話に出てくれるかなぁ。何でもいいからしゃべりまくってよ。そしたらもう掛けてこなくなるかもしれない。ねえ、すごいの、してよ。縛ってもいいんだよ。失神してもいいんだよ」


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テーマ:自作BL小説 - ジャンル:小説・文学

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